
「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」
(戸部良一ほか 中公文庫)
https://www.chuko.co.jp/bunko/2024/12/207593.html
この本が刊行されたのは1984年(昭和59年)。40年以上前の本ですが、今なお読み継がれ、多くの経営者や研究者が推薦図書として挙げています。
本書は、一人の著者が書いたものではありません。防衛大学校や防衛庁防衛研修所戦史部(現在の防衛研究所)で戦史研究に携わっていた研究者と、経営学者が共同で執筆したものです。
歴史を専門とする研究者だけでもなく、経営学だけでもない。
異なる専門分野の研究者が、「日本軍はなぜ敗れたのか」という問いを、「組織」という視点から分析したことが、本書を唯一無二のものにしています。
取り上げられるのは、ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦という六つの戦いです。
本書は、戦力差や物量差だけを敗因とは考えません。
現場の情報が組織の上層部まで十分に生かされなかったこと、過去の成功体験にとらわれたこと、変化する状況に柔軟に対応できなかったことなど、組織に共通する特徴を一つひとつ丁寧に分析しています。
経営者として、組織マネジメントを考える際に、教材となる事例がいくつも引用されています。
インパール作戦で中心的な役割を担った牟田口廉也軍司令官は、盧溝橋事件の当事者(連隊長)であったため、「私は盧溝橋事件のきっかけを作ったが、事件は拡大して支那事変となり、遂には大東亜戦争にまで発展してしまった」と自責の念を抱き、「もし、今度は、自分の力によってインドに侵攻することができれば、国家に対して申し訳が立つであろう」と考えていたとされています。
牟田口の積極論には反論が多かったとされていますが、河辺正三方面軍司令官(盧溝橋事件当時の牟田口の上司)は、「何とかして牟田口の意見を通してやりたい」と述べ、作戦不奏功の危険性が大きいことから、計画の見直しを求める意見が出た際にも、「そこまで決めつけては牟田口の立つ瀬はあるまい。また、大軍の統帥としてもあまり格好がよくない」として、これを退けました。
このような事象を通じて、本来、「人間関係や組織内融和の重視」は、組織マネジメントにおいて重要なことであると考えられますが、むしろ、①情勢分析に基づく戦略策定の欠如、②急激な構造的変化への不適応、③ブレイクスルーの不発生、④異端の排除などのデメリットを多く導き出してしまう危険性が高いことが分かります。
現在でも、組織論、マネジメントの本は多数出版されていて、それらの本に比較すると、本書は、若干冗長で、また、繰り返しも多く、いささか通読し難い面もあります。
しかしながら、「決して繰り返してはならない戦争の歴史」と「現在にも通じる組織マネジメントの基本」を学ぶことができるため、おすすめの一冊です。
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