
「戦争ミュージアム 記憶の回路をつなぐ」
(梯久美子 岩波新書)
https://www.iwanami.co.jp/book/b648024.html
本書は、全国14か所の戦争ミュージアムを訪ね歩き、それぞれの土地に残る記憶や、それを語り継ぐ人々の思いを丁寧に描いたノンフィクションです。
単に、展示内容を紹介するガイドブックではなく、「なぜ、その展示を残し続けるのか」を考えさせてくれる一冊です。
私も訪れたことのあるミュージアムが、山口県の周南市回天記念館です。
「回天」は、人が操縦して敵艦に体当たりする人間魚雷です。
学業に励み、家族を思い、将来への夢を抱いていた若者たちが、兵器として命を絶たれていった現実を、本書は静かな筆致で伝えています。
回天記念館のある大津島へは、山口県のJA徳山駅近くのターミナルからフェリーで移動します。
大津島には、回天運搬用のトンネルも残されていて、瀬戸内の海の綺麗さと、軍事施設の残酷さとのコントラストに複雑な思いを抱きました。
また、東京大空襲・戦災資料センターも訪れたことがあります。
東京大空襲では、一夜にして10万人ともいわれる人々が命を失いました。しかし、その記憶は広島や長崎ほど広く語られてきたとは言えません。
1945年(昭和20年)3月10日以降の大空襲では、アメリカ軍は、都市の中で、住宅が密集し人口密度が高い市街地(深川、浅草、日本橋など)を、焼夷地区1号に指定して、そこをまず焼夷弾で焼き払う絨毯爆撃が展開されました。
焼夷地区1号の目標地域には、軍施設や軍需工場などの明確な軍事目標はほとんどなく、住民を殺戮し、それによって戦争継続の意思をそぐことが、主な目的だったと言われています。
本書では、この資料センターが、生存者の証言や遺品を地道に集め、「一人ひとりの人生」を記録し続けていることが紹介されています。
旅に出ると、有名な観光地や名物を訪ねることが多いものです。しかし、その土地に戦争ミュージアムや戦争遺跡があるなら、一度足を運んでみるのもよいのではないでしょうか。
本書で紹介されている
戦争ミュージアム14カ所
- 大久野島毒ガス資料館
- 毒ガス製造と使用の知られざる歴史
- 予科練平和記念館
- 大空に憧れた少年たちの「特攻」
- 戦没画学生慰霊美術館 無言館
- 遺された絵が語りかける青春の美術館
- 周南市回天記念館
- 若者を兵器として扱った「人間魚雷」の実態
- 対馬丸記念館
- 子どもたちを乗せて沈んだ疎開船の悲劇
- 象山地下壕(松代大本営地下壕)
- 本土決戦に備えて掘られた巨大な地下壕
- 東京大空襲・戦災資料センター
- 記録することで記憶をつなぎとめる
- 八重山平和祈念館
- 知られざる戦争マラリアの実相を後世に残す
- 原爆の図丸木美術館
- 絵の前に立ち、死者からの問いを受けとめる
- 長崎原爆資料館
- いまこそ学ぶべき核兵器の惨禍
- 稚内市樺太記念館
- 戦争で手に入れた領土で起きたこと
- 満蒙開拓平和記念館
- 「国策」がもたらした八万の死
- 舞鶴引揚記念館
- シベリア抑留の帰還者を迎えた町
- 都立第五福竜丸展示館
- 市民が守った被ばく漁船を展示
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